みなさん、こんばんは。
臨床心理士のゆり(@counseler_yuri)です。
このHPのタイトルにもなっている「認知行動療法×ヨガ」について、認知行動療法×ヨガとはどうゆうことなのかを解説していきたいと思います。
Contents
自分にとって必要なものを!
心理療法はたくさんあります。
「どの心理療法が自分にとって必要なのか?」
現在は心理療法がたくさんある分、迷ってしまうかもしれません。そして、実際に必要かどうかはやってみないと分からないと思います。
私は基本的に認知行動療法に基づいて心理カウンセリングを行なっています。
しかし、クライエントさんの状況によっては、認知行動療法をベースにしつつも、コミュニケーションやセルフ・コンパッション、感情コントロールを組み合わせるなど、比較的カスタマイズしています。
また、認知行動療法をより効率良く進めるためにマインドフルネス瞑想をおすすめしています。マインドフルネス瞑想によって「気づく力」が養われますので、認知行動療法がスムーズに進むようになります。
マインドフルネスが認知行動療法の第三世代と呼ばれているので当然といえば当然なのかもしれないです。とりあえず、現在わたしが考えていることについてまとめてみます。
現在の問題には「認知行動療法」が有効
認知行動療法は現在の困りごと、現在のストレスにどう対処していくか?という心理療法です。
つまり、ストレスマネジメントスキルと考えることができます。
自分の困りごとやストレス状況(環境)によって、自分はどのような反応が起きているのか、認知行動療法の基本モデルに沿ってアセスメント(理解)していきます。
認知行動療法では個人の反応を4つに分けて考えます。
認知(考えやイメージ)、感情(気持ち)、行動、身体反応の4つです。そして、この4つは相互に影響し合います。
ストレス状況に対して、ネガティブに考える(受け取る)と、ネガティブな気持ちになりやすいものです。ネガティブな気持ちだとネガティブな行動を取りやすいかと思います。また、強い身体反応が起きるとネガティブな気持ちやネガティブな行動になりやすかったり・・・などなど。
具体的に言うと、上司からミスを指摘された時に、「自分はなんてダメな人間だ。ポンコツだ。」と考えると、気持ちが落ち込んだり、次の仕事を上司に報告しづらく先延ばし(行動)してしまったりします。しかし、上司からミスを指摘された時に、「早めにミスがわかって良かった。次に活かせる!」と考えた場合は、気持ちは安心したりニュートラルなままで、行動も上司にいつも通り仕事を報告するなど変化しないかもしれません。
ネガティブに考えてしまうことで、ネガティブな悪循環、負の連鎖が起きているのなら、上記のようにストレス状況がより辛いものになってしまいます。
ネガティブに考えてしまうことが癖になっていたり(認知の歪みとも言われる)、ネガティブな行動パターンが繰り返えされているために、悪循環、負の連鎖が続いているのなら、「認知」や「行動」にアプローチをして、悪循環を好循環にしていこうと言うのが認知行動療法です。
とても効果があり、現在の困りごとやストレスを軽減し、気持ちを改善してくれます。
認知行動療法だけでは足りないなと感じるケース
- 感情が強すぎる場合
- 自分の内面に目を向けることが苦手な場合
- 過去のトラウマなどが関係している場合
感情が強すぎる場合、自分の内面に目を向けることが苦手な場合は、認知行動療法に時間がかかります。なぜかと言うと、自分の内面に目を向けられないと、自分の考えや気持ちに気づけないからです。気づけないものは対処できません。
この場合は、マインドフルネス瞑想やヨガによって自分の内面に意識を向ける習慣づけをすることが有効です。
マインドフルネスは認知行動療法の第三世代と呼ばれています。そして、ヨガは動作瞑想のひとつとも言えます。
医療領域にマインドフルネスを導入したアメリカの心理学者ジョンカバットジンは、マサセッチュ大学でマインドフルネスストレス低減法という8週間のプログラムを実施し、MRIによって脳科学的にマインドフルネスが効果あることを発表しました。
そのプログラムの柱は、マインドフルネス瞑想、ボディスキャン瞑想、ヨガ瞑想です。
マインドフルネス瞑想やヨガでメタ認知を鍛える
ヨガは、主に3つの柱からなります。
(本当はもっとありますが、ヨガの修行僧でなければ3つでいいかなと思います)
- アーサナ(ポーズ)
- 瞑想
- 呼吸法
実際に身体を動かしながら、筋肉の伸びや緊張などに気づき、自己調整します。体の体幹や重心など、自己の内部にも意識を向け、自己調整します。
呼吸法によって自律神経にアクセスし、感情コントロールにつながります。
そして、瞑想によって呼吸や身体反応に注意を向けて、気づく力を養います。
マインドフルネス瞑想では、良い悪いなど評価や比較を加えず、ありのままを観察します。このありのまま、事実だけを観察する力が認知行動療法に活きてきます。
ヨガや瞑想を合わせて実践することで、より自分の反応に気づきやすく、より悪循環に巻き込まれにくくなります。他にも、瞑想によって、扁桃体が器質的に変化し、ストレスをストレスと感じにくくなったり、怒りや不安など強い感情に巻き込まれにくくなります(感情コントロール)。
書き出すと長くなるので、とりあえずここまでにします。
過去のトラウマなどが関係している場合
次に、過去のトラウマが関係していたり、問題が子ころからずーっと長く続いている場合などです。
この場合は認知行動療法だけではものすごく長く時間がかかってしまったり、もっとスキーマレベル(自分のコアにある信念や思い込み)に働きかける必要があると感じています。
しかし、スキーマ療法をやることや、自分の過去の体験に目を向けることはとても辛い作業になります。
何も準備せずに向き合うと、体調がドワっと悪くなってしまうこともあります。
スキーマ療法は認知行動療法の発展系なので、スキーマ療法をやるためには、まず認知行動療法を取り組んでからになります。
セルフ・コンパッション
また、セルフ・コンパッションによって、「自分を思いやる」スキルを高めることも有効です。
自分で自分を責めてしまったり、自ら悪循環のパターンに陥ってしまう場合もあります。自分で自分を苦しめている場合は、自分自身に安心感を感じられません(自分の中に敵がいる)。
自分の中に敵がいると、自ら損をするような行動を取ってしまうこともあります。
自分に優しくするとはどんなことなのか?
安心すること、安全感とはどのような感覚なのか?
セルフ・コンパッションのスキルを高めることは、自他に優しくする上でとても役に立ちます。
そして、わたし自身セルフコンパッションのワークで、自分に必要なものは何なのかと探っていく作業がスキーマ療法にも生きてきました。
自分が子供の頃にどんなスキーマが出来上がったのか理解する上で、とても役に立ちました。自己理解自己受容する上で、必要な作業だったと思っています。
スキーマ療法は、取り組む中でつらさを伴うものなので、認知行動療法やセルフ・コンパッションのスキルがあるから、ある程度安心して取り組めるな、日常生活に支障を与えないな、と思います。
トラウマセンシティブヨガ
ネパールのヨガの先生は、
「ヨガは心と身体をつなぐもの」
と教えてくれた。つらい体験やストレスで感情や身体感覚など、心や身体を切り離してしまった人たちもいると思う。
その時は必要だったから、身を守る手段だったから。
もし準備が出来たら、またつないでも良いのかもしれない。
— 心理カウンセラーゆり⭐️臨床心理士/公認心理師 (@counselor_yuri) September 3, 2019
ヨガは、サンスクリット語で「ヨガは心と身体をつなぐもの」という意味です。
現在は認知(心)ばかり重視して、身体を軽視する傾向にあります。認知で抑え込むのが身体だという考えてしまいやすいです。
また、つらい体験やストレスで感情や身体感覚など、心や身体を切り離してしまう場合もあります。あまりに辛い体験だったため、「何も感じないようにする」。その時は必要だったから、身を守る手段だったから適応的行動として、意識的なり無意識的なり切り離したものです。
しかし、一度切り離してしまうと、つなぐことは大変です。なかなか感情や身体反応など気づけなくなってしまう場合があります。
そんなとき、再び、心と身体をつなぐ方法としてヨガが注目されています。
trauma sensitive yogaといって、トラウマに特化したヨガがあります。2020年はじめに研修に行ってきます(英語の壁に怯えています)
認知から攻めるか身体から攻めるか
認知行動療法は、脳から攻める「トップダウン型」の対処方法です。ヨガや瞑想は、身体から攻める「ボトムアップ」型の対処方法ともいえます。
また、ヨガ自体にうつ軽減などの効果があります。
ヨガにうつ症状軽減などの効果があることは研究で明らかになっています。
しかし、下記研究でも「ホプキンズ博士も、「現時点では、ヨガは (単体でというよりも)資格を持ったセラピストによる標準的な治療と併用されるのが恐らく最も効果的であるという助言に留まる」としている。」と記載あるように、カウンセリングなどと組み合わせることで最も効果が発揮されるとのこと。
必ずしも両方を組み合わせる必要はありません。
しかし、認知行動療法やスキーマ療法など、トップダウン型の心理療法に対して、ヨガや瞑想を組み合わせてみるという選択肢もあり、わたし自身その効果を実感しています。
認知行動療法×ヨガに関連する文献
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